検査のご案内

甲状腺の病気を診断する為の検査について

甲状腺機能に異常があるかどうかは、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの血中濃度を測定すればわかりますが、病因を特定するには自己抗体検査が必要です。甲状腺腫瘍が良性か悪性かきちんと鑑別するには、超音波・シンチグラフィー・CTなどの画像検査や甲状腺腫瘍の細胞検査である穿刺吸引細胞診を行う必要があります。

甲状腺機能検査

甲状腺機能に異常があるかどうかは、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの血中濃度を測定すればわかります。

甲状腺ホルモンには、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)という二種類があります。血液中に遊離したこの2つのフリーT3とフリーT4を測定すれば、甲状腺機能が正常か、亢進しているか、低下しているかがわかり、使用している薬の効果も調べる事ができます。

また脳下垂体から分泌されるTSHという甲状腺刺激ホルモンは、T3とT4の量をコントロールするのでTSHもあわせて測定する事により、甲状腺機能に異常があるかどうかがわかります。

TSHは脳下垂体から分泌され、甲状腺ホルモン(T3,T4)の生産を調整する甲状腺刺激ホルモンです。血液中の甲状腺ホルモン(T3,T4)が低くなるとTSHは増加し、逆に血液中の甲状腺ホルモンが多くなるとTSHが減少します。

甲状腺機能が正常な場合は、血液中のT3、T4が低下すればTSHが増え、逆に血液中のT3、T4が多くなると、TSHが減ってT3、T4の分泌を抑えようとするために、甲状腺ホルモンは常に一定量にコントロールされます。

このような調節のしくみをネガティブ・フィードバック機構といいます。

ところが甲状腺機能に異常がおこると、この調節がきかなくなり、甲状腺ホルモンの量が過剰になったり少なくなったりするのです。フリーT3、フリーT4が高くTSHが低くなれば甲状腺機能亢進症で、フリーT3、フリーT4が低くTSHが高くなれば甲状腺機能低下症となります。

甲状腺病因検査 | 甲状腺自己抗体検査

びまん性甲状腺腫(バセドウ病や橋本病等)は、甲状腺にだけ特異的に見られる自己免疫疾患で、自分の甲状腺を異物とみなして甲状腺に対する自己抗体ができてしまう疾患です。

バセドウ病の場合: 抗TSH受容体抗体(TRAb)が出現し、その抗TSH受容体抗体(TRAb)が甲状腺を常に刺激し、必要以上に甲状腺ホルモンをつくってしまう。
橋本病の場合: 抗サイログロブリン抗体(TgAb)か抗甲状腺ペルオキシターゼ抗体(TPOAb)が出現し、そのTgAbとTPOAbが甲状腺を破壊し、徐々に甲状腺ホルモンがつくられなくなってしまう。

病因を特定するには、抗TSH受容体抗体(TRAb)、抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の3項目の検査が必要です。

びまん性甲状腺腫 診断のための検査と結果

機能検査

 TSH
(甲状腺刺激ホルモン)
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺機能正常
 フリーT4
(フリーサイロキシン)
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺機能正常
 フリーT3
(フリーヨードサイロニン)
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺機能正常

自己抗体検査

 TRAb
(抗TSH受容体抗体)
甲状腺機能亢進症 バセドウ病で陽性
甲状腺機能低下症 一部は陽性 
甲状腺機能正常 陰性
 TgAb
(抗サイログロブリン抗体)
甲状腺機能亢進症 バセドウ病で陽性
甲状腺機能低下症 橋本病で陽性
甲状腺機能正常 橋本病で陽性
 TPOAb
(抗甲状腺ペルオキシターゼ抗体)
甲状腺機能亢進症 バセドウ病で陽性
甲状腺機能低下症 橋本病で陽性
甲状腺機能正常 橋本病で陽性

甲状腺画像検査 | 甲状腺超音波

甲状腺の大きさ、炎症や血流の程度や腫瘤があるのか、腫瘤の性質やリンパ節への転移などがわかります。甲状腺の病気をしている人に最低限必要な検査です。

下の左写真では(甲状腺の腫れを認めるが)、血流がほとんどありません。しかし、右写真では血流(赤青が血流)を見てとる事ができます。

※左:正常機能 右:バセドウ病

甲状腺画像検査 | 甲状腺シンチグラフィー

放射性物質を利用し検査する方法ですが、とても少量の放射性物質を使用するので、妊娠している方以外は心配がありません。

この検査の目的は、甲状腺機能亢進症の原因疾患の鑑別診断にとても重要です。写真のようにバセドウ病や機能性結節には、放射性物質のとりこみがあると赤くなり、他の病気にはとりこみがないか又はわずかです。

※左:甲状腺機能性結節 中央:バセドウ病 右:正常

甲状腺機能亢進症の原因疾患(バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、機能性結節など)により、それぞれ治療期間・治療方法は全て違ってきます。ですから、このシンチグラフィーの検査を行い、きちんと鑑別しなければなりません。シンチグラフィー検査は、腫瘍の大きさ・形がわかり、肺や骨への癌の転移の有無の診断にも役立ちます。

甲状腺画像検査|甲状腺MRI、CT、レントゲン

甲状腺の腫瘍や腫大が、他の臓器である食道や気管にどのように影響しているかが診断できます。

甲状腺腫や腫瘍の大きい場合は、気管が圧迫され偏位やそのまま狭窄されている患者さんがいます。正常の気管は正中にまっすぐ通っていますが、甲状腺腫瘍のため気管が細くなり右へ偏位しているMRIの画像(下の写真)です。

穿刺吸引細胞診

結節性甲状腺腫の場合、悪性か良性か鑑別するのに腫瘍に直接針をさし、その細胞の病理診断をします。

細い針をさすので、余り苦痛は感じませんので御安心く下さい。甲状腺の悪性腫瘍の6種類のうち、濾胞癌以外の組織病理診断がほぼわかります。その組織型により手術方法や放射線治療や化学療法などを考えて治療にもっていきます。しかし、診断をつけるため数回の細胞診検査をする場合もあります。

濾胞癌は、甲状腺エコーや穿刺吸引細胞診でも診断は難しいです。

各種検査機器と可能な検査

スペクトCT

CT

甲状腺エコー

各種X線

骨塩測定(骨粗しょう症)DEXA法

穿刺細胞診検査

内視鏡
脳波
肺機能検査
重心動揺計(めまい)
骨塩定量測定
心エコー

検査の分析は併設している金地甲状腺病研究所の検査センターで行っています。